うまく歳をとる
最近、U2という4人組のロックバンドのコンサートを、ロックとはほとんど縁のなかった中学生の娘と観た。
私ももう四十半ばを過ぎ、アリーナで立ち見はしんどいと思い、二階の椅子のある席をとったのだが、コンサートが始まった瞬間、会場にいる2万人が立ち上がってしまい、前の席の男の子はコンサートの間中ピョンピョン跳ねているし、右隣りの男性は一緒になって歌っている状態。ゆっくり観ようと思った私が悪かったのかもしれないが、このままでは見えない。仕方なく立ち上がり、ふと左隣りの娘を観ると、彼女は今まで見たこともない表情で目を輝かせている。予想外の大音量とクラクラするほどの閃光の嵐に圧倒され、完全に会場の雰囲気に飲み込まれてしまっている様子。
コンサートのあと「どうだった?」と感想を尋ねたら「U2、すごくかっこよかったよ。来てよかった」と答えた。恐らく真剣に直向きにパフォーマンスする彼ら4人の姿に感動していたのではないか。つまりそれが彼らの生き方であり、その生き方をステージで表現しようとする彼らの姿勢に圧倒され感動したのだと思う。
常に世界の政治と絡み続けてきた彼らも私と同じ様に四十半ばを過ぎた。彼らの音楽を二五年聴き続けてきたが、彼らは歳をとるごとにカッコよくなって行く。うまく歳をとっているということだと思う。
アップル社が彼らをアイポッドのCMに使ったり、アイポッドU2バージョンを特別に販売しているのはそんな彼らの進化する姿をスティーブ・ジョブスがアップル社と重ね合わせたからではないだろうか。
新年を迎え、またひとつ歳をとる。歳をとることは決して悪い事ではない。しかしそう思えるためには真剣に、真面目に、そして勇気を持って何事にも取り組まなければいけない。
会場には会社帰りのサラリーマン風の男性が目に付いた。彼らもまた、がんばる勇気をU2からもらって帰途についたことだろう。
アイルランド出身の四人を見てそんなことを感じた。
ちなみに娘はあれから毎日U2を聴いて、来春の受験に向かう気持ちを奮い立たせている。
石川 靖 (朝日印刷工業株式会社社長)
「星の王子さま」を好きになったわけ
先日ある方々と一緒にお酒を飲む機会があり、なんとなくお葬式の話になった。(年末・お正月早々縁起でもない?かもしれませんが、「葬儀」を亡くなった方とそれを弔う人の「新たな出発」というように考えていただきたいと思います)やはり生前にその人が住んだ家で、親しかった人が集まるような通夜・葬儀はいいものだな…というような話だった。
私は祖母の葬儀を思い出した。いい通夜・葬儀だった。私が小学校六年の時で、病院で夜中に峠を迎え、冷たくなりつつある祖母の足をさすっていたその翌朝に祖母が亡くなった。私は病院の屋上でボケ-っとしながら涙が出ないのを不思議に思った。夜、祖母の家で通夜が行われた。いつもの布団に北枕に寝た祖母に、母と一緒にお化粧をした。まだ涙は出なかった。ただ、おばあちゃんは名前が変るから覚えなくては天国で会えないと(自分が天国に行くことを大前提に)戒名を繰り返し唱えた。なぜその名をつけてくれたのかというお坊さんの話と一緒に今でも覚えている。さて、葬儀が行われて火葬場に行った時だった。私はもうどうしようもなく悲しくて、祖母から離れるのが辛く、おばあちゃんともう話ができないということを実感し、死と直面した。涙が止まらなくて、祖母と接したすべての記憶に対して、もう少し優しく、楽しく過ごせたのではないかと後悔した。それまで一人っ子で甘やかされていたためか、内弁慶で家ではうるさいが外では借りてきた猫のように静かなツンとした嫌な子だった私が、その体験以降、人と接する時や自分で何かを発したいとき、一期一会で積極的に思いやりを持てるようにしようと意識するようになった。今それができているかどうかは疑問だが…確かに私は変った。
悲しいことや辛いことはなるべく避けたいが、そしてそうした体験がないと、文学や映画に共感できない時がある。子供向けだからと読まされて全く好きになれなかった星の王子さまを、何度も繰り返し読むほど好きになったのは最近だ。大切な人々との別れや、白黒割り切れない大人の社会、絆が重荷な時…それでこそ愛しい時間や人との関係を感じて、やっと星の王子さまを好きになった。子供の頃理解できなかった芸術・文学に、ふと共感したとき、「大人になったなぁ」なんて感じてしまうが…まだ私の知りえない美や感動がたくさんあるのだろう。と、私自身子供の頃の追体験で、日々鈍感になって自分を省みなくなっていた事に気付いた夜だった。
いつも私を刺激してくれる皆様ありがとうございます。みなさまが、実り多く素敵な新年を迎えることができますように。
齊藤 恵
2006年ノイエス朝日を振り返って
1月
サロン・ディヴェール
2月
第56回 塩原友子個展
横手由男遺作展
3月
斉藤弥平展〈第一期〉
綿貫哲雄展
4月
田島弘章・智子二人展
ニットソーイング作品展(貸)
樺沢健治作陶展(貸)
5月
田中栄作展
群馬工芸美術会五月展
六月
住谷正巳展
木村明ガラス展
7月
第四回 ノイエス展
深雪アートフラワー展(貸)
詩人クラブ朗読会
8月
武田美通・小松健一展
鉄の造形と写真のコラボレーション
斉藤弥平展〈第二期〉
9月
松本忠義展〈第一期〉
加藤アキラ展
10月
石原彰二展
塚本実展
大西靖子木版画展
11月
茂木康一展
藤森カツジ展(貸)
12月
任性珍・大石祐子木漆工藝
清水和夫と弟妹展
展覧会、会期中にオープニングパーティー、お話の会、ダンスの会やミニコンサートも開催しました。お菓子、お漬物、その他の差し入れをして下さった皆様ありがとうございました。
