展覧会開催に寄せて
濵名幸子が亡くなってから15年目の春を迎えました。濵名は、生きることの意味を問い、その一環として古代より現代までの美術文化や思想、哲学を探求し、自身の表現世界を創り上げてきました。それは、宇宙的なもの根源的なものへの作者の憧憬であり、生成する幻想の中に数学的な法則性や構造性をも見出していたと思われます。
この度の展覧会で、作者の深い思索の軌跡を感じ取っていただければ幸いです。
仮の三次元否定空間において単純な線の移動や交叉は、進出と後退・+と-・凸と凹の振幅を生む。逃れようとする流れや突き詰める緊張は、時に形態から離れ空間へと抜けて幻惑を引き起こす。
それは、おそらくオーナメント世界の一要素で、私の表現に内的共感と豊かさを相乗し、代数的構造・群と関連しつつ尽きない手掛かりを与えた。 (作品集あとがきより)
濱名幸子 Sachiko HAMANA 1949-2011
1949年群馬県高崎市に生まれる。1972年横浜国立大学美術科卒業。卒業後は、東京でデザイン関係の仕事に携わりながら、個展やグループ展で作品を発表。1976年教職に就き、高崎市を拠点として活動。1983年よりモダンアート協会展に出品、2007年会友佳作賞受賞、同年会員となる。1984年よりモダンアート協会群馬支部展、1988年より群馬県美術展、1990年よりぐんま女流美術協会展、1993年より高崎市市民展に出品。創作の初めより世界の文明の起源に関心を持ち、各地の自然や遺跡、美術館を訪ねる。1980年代よりケルト文化に発想を得た組紐文様、糸の織り目や編み目をモチーフとした作品を手がけ、後年には糸偏の創作文字をタイトルとした作品も多い。2010年に『濱名幸子作品集』を出版するとともに、集大成として高崎シティギャラリー第一展示室にて記念展を開催。2011年逝去。2024年高崎市美術館企画「視覚の冒険者たち」(1月23日~3月17日)に作品3点が出品展示される。